エンジンの無い航空機「グライダー」で曲技飛行の技を競う「空のフィギュアスケート」
・~・~・プロフィール・~・~・
酒井 隆 Takashi Sakai
1975年 2月 神奈川県厚木市で誕生
1992年12月 17歳で自家用操縦士技能証明取得
1995年 9月 21歳で事業用操縦士技能証明取得
事業用操縦士の資格を取得後、航空機使用事業会社で勤務
退職後 飛行クラブのセーフティパイロットとして運航補助に就く
飛行クラブ解散後は週末にグライダーを楽しみ、グライダーを空に連れて行く曳航機のパイロットとして飛んでいます。
今の仕事は
自動車メーカーで新車エンジンの原価管理業務に就いています。設計された部品の原価の見積りを作って、エンジン1台分の原価を管理するお仕事です。
空を飛ぶこと以外の週末の過ごし方は
・1990年代の古いBMWのレストアをDIYで行い
・古い自宅を修理改造し
・「燻製作り」などの料理を嗜んでいます。
・「何事にも挑戦して自己追求していく事を」をコンセプトとした個人ブログを運営中
「狼の皮を被った羊」 すこしずつ挑戦しよう
私は「空を飛ぶ事を追求する」生き方を選びました。
高校生で飛行機とグライダーのライセンスを取得し、一時期はプロとして小型飛行機(セスナ)のパイロットとしてスカイダイビング等のフライトを実施していました。プロとして飛ぶ事が無くなった今でも週末にグライダーで空を楽しんでいます 。
最初に「グライダー」とは?
馴染みのない乗り物ですが、飛行機やヘリコプターの仲間で立派な「航空機」です。
グライダーの特徴はウイングスパン(翼の幅)14~25mの細長い翼を持つ1~2人乗りの機体でエンジンを搭載していません。
もちろんエンジンが無いので自力では離陸出来ないので、飛行機にロープで繋いで曳航(牽引)して上空600~1200m程に昇ります。十分な高度に到達したらロープを切り離して滑空で飛行する航空機です。滑空だけでは紙飛行機の様に高度を失い着陸になりますが、トンビやカモメの様に上昇気流を捕えて高度を回復して飛び続ける事が出来ます。この飛行方法(ソアリング)からグライダーは「空のヨット」とも呼ばれています。
熟練グライダーパイロットが操る高性能グライダーの飛翔能力は驚異的で、一日に14時間以上飛び続け 1,000km以上翔破できます。
このグライダーに乗って、300~500kmのコースで平均速度を競うレースと、飛行距離、獲得高度を探求する記録飛行があり「より高く・より速く・より遠くへ」をもっともシンプルな航空機で挑戦するスポーツです。
グライダー競技曲技飛行を始めた経緯
滑空場で毎週末グライダーに乗りソアリングを楽しんでいたところ、2010年に曲技飛行世界選手権に出場していた現役選手に誘われ35歳の夏から「世界一のグライダー曲技飛行操縦士」を目指す挑戦が始まりました。
「グライダー曲技飛行」とは?
飛行場上空に設定された一辺1000 mの正方形の空域内でグライダーのよる曲技飛行を行い、「飛行の正確性」を競う競技です。カタログにより定義されたループやロール等のフィギュア(科目)を10~13個ほど組み合わせた「曲技飛行シーケンス」を飛行し 地上の5~9組のジャッジにより採点され順位を競います。氷上で競われるフィギュアスケートに似た競技です。
挑戦が始まって、、
グライダー曲技飛行チーム「Red Fox」に所属し群馬県にある日本グライダークラブ板倉滑空場で機種転換トレーニングから開始しました。使用する機体は曲技飛行を行うために強化された曲技飛行専用機で、最大g(重力加速度)は +9g -7gに耐えられ、最大速度も290km/hが可能です
エアショーでの展示飛行
日本国内でグライダー曲技飛行の基礎を学んだ後に、2012年の夏にポーランドへ渡り、世界選手権を7回制覇したポーランド人パイロット「イージー・マクラ氏」を師として飛行技術を学び、最初の世界選手権までに150回を超えるトレーニングを重ねて 安全に競技を飛べる技量を得て、競技パイロットとしてのスタートし、今日まで以下の戦跡を残しております。
開催年月 | 競技会名称 | 開催地 | 競技クラス | 競技機型式 | 順位/競技者数、
得点率 |
2021/6 | Glider Aerobatic Polish Championship | ポーランド
レシュノ |
Unlimited | Swift-S1 | 6/7
61.816% |
2019/8 | 10th FAI World Advanced Glider Aerobatic Championship | ルーマニア
デヴァ |
Advanced | Swift-S1 | 17/31
64.747% |
2018/8 | 9th FAI World Advanced Glider Aerobatic Championship | チェコ
ヅブラスラヴィツェ |
Advanced | Solo-FOX | 34/35
47.493% |
2018/6 | Glider Aerobatic Polish Championship | ポーランド
トルン |
Unlimited | Solo-FOX | 4/4
62.910% |
2016/8 | 7th FAI World Advanced Glider Aerobatic Championship | ハンガリー
マトコ |
Advanced | Solo-FOX | 21/39
68.409% |
2016/7 | Glider Aerobatic Polish Championship | ポーランド
ヴロツワフ |
Unlimited | Solo-FOX | 2 /3
59.053% |
2015/8 | 6th FAI World Advanced Glider Aerobatic Championship | チェコ
ヅブラスラヴィツェ |
Advanced | Solo-FOX | 22/47
66.57% |
2015/7 | Glider Aerobatic Polish Championship | ポーランド
トルン |
Advanced | Solo-FOX | 4 /18
73.727% |
2014/7 | 5th FAI World Advanced Glider Aerobatic Championship | ポーランド
トルン |
Advanced | Solo-FOX | 24/36
47.188% |
2014/7 | Glider Aerobatic Polish Championship | ポーランド
トルン |
Advanced | Solo-FOX | 5/17
73.366% |
2013/7 | 4th FAI World Advanced Glider Aerobatic Championship | フィンランド
オリパ |
Advanced | Solo-FOX | 29/40
63.956% |
2013/6 | Glider Aerobatic Polish Championship | ポーランド
チェンストホヴァ |
Advanced | MDM-1 -FOX | 3/17
76.196% |
2012/7 | Glider Aerobatic Polish Championship | ポーランド
イレニヤグラ |
Advanced | MDM-1 -FOX | 7/7
% |
現在の活動
2010年から始めたグライダー競技曲技飛行は今年で12年目となりました。2020年度は新型コロナウイルスの影響により海外遠征を断念し1年の休止になりましたが、2021年は技量低下を危惧して遠征を行い、ポーランド選手権に参戦して競技活動を再開しました。
今後も世界選手権での優勝を目指し活動を続けてまいります。
毎年6~8月の競技シーズンに欧州でトレーニングキャンプを実施し 60~80回ほどの練習を行い、ポーランド国内選手権及び世界選手権に参戦しております。(100回以上練習できるのが理想的です)
今日まで900回の曲技飛行を経験し2016年より最上級クラスのUnlimitedへの挑戦を続けております
毎年の活動費用
毎年、夏の競技シーズンに入ると欧州に渡り、選手権前の集中トレーニングを行います。宿泊費は飛行場の宿舎などを利用して費用を抑えております。ほぼ費用の半額が練習費用と機体レンタル料です。
往復航空券(成田~ワルシャワ) | ¥ 200,000 |
現地滞在費(35日 x40EUR) | ¥ 196,000 |
グライダーレンタル費用(3000EUR 1シーズン) | ¥ 420,000 |
トレーニング時曳航費用 (60フライト x50EUR) | ¥ 420,000 |
世界選手権エントリー費用(850EUR) | ¥ 119,000 |
世界選手権曳航費用(12フライト x55EUR) | ¥ 92,400 |
現地食費(15EUR x30日) | ¥ 63,000 |
合計 | ¥ 1,510,400 |
(140JPY/EUR)
2022年の遠征予定
トレーニングキャンプ(ポーランド) 7月31日~8月15日
世界選手権大会(フランス) 8月17日~8月27日
本年度の予定は、運良く会社の夏期休暇と重なり、約1ヶ月の予定が組めそうです。
EASAテンポラリーライセンスでのフライトは年間28日に限定されているので、少し速めにポーランドへ移動してEASAグライダーライセンスの取得を計画しています。
EASAグライダーライセンスの挑戦の後にポーランドチームと合同の2週間のトレーニングキャンプを行い、技量回復と科目飛行精度を向上させて世界選手権に挑みます。
ポーランドからグライダーアクロ世界選手権開催地のフランス イスダンへの移動は1,700km、グライダートレーラーを曳いて陸送で片道2日の旅になります
今後の展望
私自身の目標は「世界一のグライダー曲技飛行士」です。良き師に恵まれ、チームメイトとも言えるポーランドナショナルチームと共に飛行技術を磨き、世界選手権の表彰台の頂点を目指します。
個人的な目標の他に「日本のグライダー界に貢献したい」と考えていることは「次世代の若いパイロットへ日本のグライダー競技曲技飛行のバトンを繋ぐ事」です。
海外ではグライダーはスポーツの一つとして広く認識されていて、フライトを楽しむだけではなく、地上での機体の組み立て、分解、清掃、機体運搬など運航の全てを共同作業で行うため、多くの仲間に出会い競技を通じて真剣に向き合うことで、お互いを理解し国を超えた友人を得ることが出来ます。
私自身、グライダー競技曲技飛行に取組む事により多くの新たな友人と出会い人生が一変しました。
競技を通じ素晴らしい経験を得ることが出来るこの競技曲技飛行への道を次世代に繋がなければならないと考えております。
直面している課題
グライダー競技に限らず日本のマイナースポーツに対する理解度は低く、国際大会に出場する選手ですら会社の理解を得ることが難しいのが現状です。この事により「海外遠征及び競技参戦」に必要な休暇と資金調達に行き詰まり競技継続を断念せざるを得ない選手も散見いたします。
先日、契約社員から正社員となり経済状況は僅かながら改善されましたが、休暇取得に関しての条件が難しくなり、長期の海外遠征により有給休暇を使いきり欠勤扱いとなると業務成績査定への影響が大きくなる、といったジレンマに直面しております。
このようなマイナー競技共通の理由から、次世代競技パイロットの発掘育成は難しい状況であり、日本ではオリンピック競技以外のマイナー競技に対する補助制度が皆無に近く、この資金調達面だけの問題だけでも学生パイロットの挑戦が難しい状況です。
ヨーロッパ諸国では企業や国からの支援により、多くの若いパイロットにチャンスが与えられ、フィンランドで開催された世界選手権では英国から15歳の競技者が参戦していました。
また、交流のあるポーランドチームにおいては毎年数名の競技者候補が現れる羨ましい状況です。
この背景にはナショナルチームの世界選手権遠征に関しての費用は国からの手厚い支援があり、ナショナルチーム選手の機体使用料金及び曳航料金はナショナルチームが支援することで、選手は負担無く世界選手権に参加できています。
このような現状で衰退が進むと日本のグライダー競技曲技飛行が途絶えてしまうことになります。これだけは避けなければならない事だと危惧しております。
所属する「公益社団法人 日本グライダークラブ」様にもご尽力頂き、共に頂点を目指しております。
日本グライダークラブホームページ 空を遊ぼう / Enjoy the Sky !
http://www.glider.jp/
今後の競技活動をより高いレベルで戦うため、そして次世代の若手パイロット育成の為にご理解ご支援いただければ嬉しく思います。よろしくお願いいたします。
第24回グライダーアクロ世界選手権について
■大会ホームページ: https://www.wgac2022.net/
■開催場所: フランス イスダン飛行場
首都パリから南に200km、車で3時間程度
■開催期間: 8月17日 〜 8月28日(11日間)
8/17 公式練習、開会式
8/18 – 8/26 競技期間
8/27 閉会式
■参加国数: 9か国
■参加人数: 34人
■開催クラス: アンリミテッドクラス、アドバンスクラス
■参加クラス: アンリミテッドクラス
■遠征期間: 7月31日 〜 9月1日(33日間)
寄付のお願い
酒井さんの活動にご賛同戴ける皆様は下記からお申し込みの上、
2022年第24回グライダーアクロ世界選手権参加支援事業募集特定寄付金申込フォーム
リンク先 https://bit.ly/wgac2022sakai
下記口座宛にお振り込み戴けますと幸いです。
振込先
みずほ銀行 新橋支店(普)1027085
(社)日本グライダークラブ
当クラブは公益法人の税額控除対象法人の認定を受けており、ご寄付には税の減免処置が適用されます。
具体的には
( 寄付金額※1 - 2,000円 ) の 40% が 税額控除額となります。※2
※1 寄付金額は総所得金額等の合計額の40%が限度になります
※2 税額控除額は所得税額の25%が限度になります。
皆様の寄付をお待ちしております!
以上