ライセンス取得したい!

 ライセンス取得したい!(指定養成制度)

 

 はじめに
語弊があるかもしれませんが、実は、免許を取得せず、練習許可書を毎年更新し続けることで、ローカルフライト(滑空場の周囲9km圏内の練習空域でのみ飛ぶこと)を楽しむことは可能です。インストラクターが地上から監督していれば、ソロ(単独飛行)で飛ぶこともできます。

でも、操縦技量が上がって行くにつれ、より遠くへ行きたい、高い所へ行きたい、他の滑空場で飛びたい、といった欲求が生まれてきます。また、安全に飛ぶには他機をどう避けるのか、飛行中に雲が低くなってきたらどうするか、といった判断を正確に行えなければなりませんが、ただ単にインストラクターと同乗飛行したり、飛行後に簡単なレクチャーを受ける程度では不充分で、系統立てた知識を体得していなくてはなりません。それには免許を取ることを目標に訓練することが、効率的かつ効果的な方法なのです。

 

 1. 指定養成とは
グライダーの免許は、正式には操縦士技能証明書という国家資格です。免許を取得するには、学科試験と実技試験に合格しなければなりません。学科試験は年3回実施され、試験会場に出向いて受験します。実技試験については、自動車運転免許のような「試験場」はないので、航空局の試験官に滑空場に来てもらい、普段トレーニングに使っているグライダーの後席に試験官が乗って受験します。いわゆる「一発受験」です。実技試験といっても、単に操縦技術だけを試験されるわけではなく、飛行全般に関する様々な知識や判断についても口頭で質問されます。自動車運転免許の一発受験と同様、難易度はかなり高いといえます。もちろん、この方法で免許を取得する人もいます。

それに対し、試験官による実技試験を免除してもらえるのが「指定養成」です。具体的には、特定のグライダークラブで、1年のある時期に、国から指定された内容の一連の操縦教育を実施し、最後に技能審査員(資格を持つ民間人)による実地の技能審査を行って技能を認定した人に対し、航空局が免許を発行する制度です。グライダークラブが臨時に「教習所」の看板を掲げるようなものです。ただし、馴れ合いで免許が交付される、などという事がないように、教育内容には厳しい規定があり、また担当のインストラクターも限定されます。

 

 2. 入所審査
指定養成に入ることを、自動車教習所に入るように「入所する」と言います。ただし、ライセンスを取りたい人なら誰でも入れるものではありません。別項にあるように、学科試験に全科目合格していて、有効期間内(合格後2年以内)であること、一定の飛行経歴を満たしている必要があります。また、指定養成はあくまでフライトトレーニングの最終仕上げという位置づけであり、指定養成で確実にライセンスを取れる知識と技量を持っていることが入所前に確認されます。これを「入所審査」といい、口述または筆記試験で知識を確認し、実際に同乗飛行して操縦技量を確認します。

 

 3. 学科勉強
指定養成の最後に実施される、いわば「卒業試験」にあたる技能審査は、口頭審問と実技審査に分かれます。口頭審問は通称「オーラルチェック」と呼ばれ、筆記試験でなく、口頭で質問され口頭で答えて、受験者が航空機の運行に必要な知識を正確に持っているか確認します。入所審査の段階で、ある程度の知識を持っていることは確認されているわけですが、最終審査に確実に合格できるよう、さまざまな科目についてみっちり勉強します。ただ単に口頭審問に通るために必要というだけでなく、実際の飛行に必要な知識も、この過程で整理されていきます。

 

 4. 実技練習
実技審査では、離陸滑走から飛行機曳航、離脱、エアワーク(空中操作)、そして、場周飛行、着陸という一連の操作を、同乗する審査官に見せることになります。なかには、普段あまりやらない課目(操縦操作の種類)もあり、それらは指定養成期間中に確実にできるように練習します。・ロートウ:曳航機のプロペラ後流の下側の位置を保つ曳航方法。曳航中1分ほど保持。
・指定地着陸:滑走路上に、進行方向へ60m間隔で置かれた白布の間に接地すること。
・スローフライト:失速速度に近い低速で左右に旋回する。低速時の挙動を理解する課目。
・フォワードスリップ:ダイブブレーキ故障、急角度での進入降下が必要な場合に使う技。
・操縦系統の故障想定訓練:後席のインストラクターが操縦桿を中立位置で握りしめて固定し、前席のスチューデントパイロットはラダーペダルのみで方向を転換したり、逆にペダルを固定して、操縦桿のみをゆっくり動かして機体をバンクさせ、方向を変える訓練。
他には、普段やっていないこととして、行動を声に出す、という練習もします。審査では安全確認してから課目を始めることになっており、審査官の耳にしっかり届くように、普段より大きな声でハッキリ声に出すクセをつけます。

 

 5. 受験前チェック
指定養成期間の最後は、技能審査を受けても良いかどうかの確認です。何度も同じようなことをチェックしているようですが、ここでは翌日が本番中の本番。技能審査の前日というタイミングです。ここまで来れば、後は翌日の天候が穏やかであることを祈るだけです。

 

 6. 技能審査
朝、審査官が滑空場にやってきます。まずは格納庫内の一室で、飛行日誌や練習許可書、無線の免許証など、書類の確認から始まります。それから口頭審問。機長の出発前の確認事項に従って、使用する練習機の整備状況や気象情報、航空情報の調べ方などをたずねられます。それが終わると、滑走路に移動して実技審査に移ります。機体の周囲を一回りして点検し、重心位置を確認した後、審査官を後席に乗せて飛行し、所定の課目を行います。同乗による審査飛行の後、審査官は機体から降り、今度はソロで同じ課目の飛行を行います。審査官は地上からその様子を観察して評価します。再び屋内に戻り、審査官からの話を聞きます。(しかし、時々質問が飛んでくる。つまり口頭審問の続きになっています)。話を聞き終わると「審査合格です」の言葉をいただき、長かった指定養成が終わりとなります。あとは寿司でも買ってきてビールを飲んで、受験生もインストラクターも互いの労をねぎらいます。

 

 7. 免許交付
技能審査合格後、審査官は国土交通省に書類を送り、約3週間ほどでくライセンスが交付されます。手数料(現在\3,000-)を郵便局などで支払い、支払証を郵送します。このとき、書留でライセンスを郵送してもらう方法と、直接省に出向いて(関東では東京霞ヶ関の官庁街にある)もらってくる方法があります。晴れてライセンスを手にするわけですが、この後、指定医療機関で検診を受けて航空身体検査2種(1年有効)を取り、はじめて有資格者として操縦ができることになります。

 

 8. ひと口アドバイス -練習許可書の有効期間と指定養成-
指定養成期間中を通して、また最後の技能審査を受けるまでは、有効な練習許可書を所持していなくてはなりません。指定養成期間中に許可書の有効期間が切れると、不利不都合が多いのです。「来年の指定養成に入ろう」と考えている人で、指定養成を行っている時期、または、その前に許可書が切れる人は、わざと許可書の更新を遅らせて、指定養成時期がすっぽり収まる有効期間の許可書を取ることを、強く推奨します。

許可書の申請と取得は、指定医療機関で診察を受けてから結果(許可申請書)が郵送されてきて、これらを空港事務所に郵送して、係官が書類を回して…、と日数的に不確定なことが多く、肝心の技能審査の日に新しい許可書が間に合わない、という非常にマズイ事態が起こり得るからです。また、審査に合格してライセンスを取得すると、ライセンスを受領した時点で許可書は失効とされてしまい、改めて指定医療機関に出向いて「航空身体証明」を取りなおさないと操縦ができない、という制度になっています。たとえ10ヶ月先まで有効な許可書でも、免許を取ったらムダになるのです。わざと許可書の更新を遅らせる事自体は特に問題ありません。その間は練習飛行ができませんが、仕方ないと思いましょう。ただし、うっかり練習飛行してしまうと法律違反となります。気をつけましょう。