クロスカントリーフライヤーの一日

寝坊してしまい、10時頃、栗橋駅で東武線を待つ。
すでに北西方向にダイナミックなストリートっぽい(駅なので遠くがよく見えない)雲が形成されており、板倉の真上を通って、栗橋付近でちぎれて、残骸が関宿方向へ流れていく。
特急が通過する。こういう日に寝坊して、こんな時間に駅にいる自分と、栗橋駅、藤岡駅に特急を停車させない鉄道会社の方針にわがままな怒りを覚える。


11:00 板倉到着。仲間からは開口一番「遅いっ!」
2254(Mini Nimbus)に続き、2468(Discus)離陸。二人とも、葛生方面4,000~5,000ftをリクエストしている。

先ほど車窓から見た板倉上空の雲は、少し風下に流れて、まだまとまりはあるものの力を失った感じ。その風上はブルー。葛生方面には、北西からのストリートが見えるが、少し遠く、かつ、周辺が乱れちぎれている。12月30日、同じ雲で苦労し、あげく、何もつかめずに4,000ftからの20分フライトを3回も繰り返した失敗を彷彿とさせる。あれは厄落としだったと思いたい。

11:51 板倉離陸
前の二人に倣って、LS4に乗る私も葛生5,000ftをリクエストする。曳航中に二人のどちらかが帰ってくるのが見える。うう……、葛生はだめだったのか? ここで次の3つの選択を迫られる。

a. 自分もとりあえず葛生をためす。
(そして、明らかに12月30日と同じ失敗を繰り返す)
b. 大平山方向(風下!)に振って、二人とは違った展開を期待する。
(そして、たったひとりで正月早々冷や汗をかく)
c. すぐに離脱して金銭的被害を最小限にとどめ、飛ばなかったふりをする。

とにかく中途半端はいかんと思いつつも、すでに曳航機は佐野の北端に達しており、否応なくプランaの失敗パターンにはまりつつ、あっ…と強いプラスを感じ、反射的に離脱。右旋回を半周もしないうちにマイナス5。必死にその辺を探すが、マイナスは減らない。葛生はまだ遠い。

これがその「中途半端」というやつではないか!
プラスを振り切ったかと思うと、マイナスを振り切る。コクピット内をカロリーメイトが無重力状態で漂う。みるみる高度は下がり、むなしく三毳(みかも)山まで帰ってくる。ここまで12月30日とまったく同じ展開。

12:20 ミカモの北端で何とかプラスをつかみ、回る。
というよりGPSの航跡では螺旋状に風下へ流される。流されっぱなしだと、すぐに上がらなくなるが、幅が狭く、蛇行すると外してしまう。
流され、上がり、前へ出て、下がるの繰り返し。2,000~3,000ftを行ったり来たり。とにかく、これを繰り返して状況の変化を待つ。

13:00 他に選択の余地が無い私は、ひたすら耐える。
相変わらず、のたうちまわりながら、やっと高度4,000ftまで戻す。少し風上、5,000ftあたりでMini Nimbus 2254が同じことをしている。彼と私のラインが異なるので、少し南に移動して、同じラインに乗る。プラスが安定してきたが、まだ気流は悪い。

しかし、しばらく前からMini Nimbusは回っていない。すぐ後ろ、500ftほど下につけて、同じラインで風上を向く。非常に弱いが+1が持続。5,500ftを越えたあたりで、+2安定。「2254、ミカモ6,000でウエーブに入りました」とのMini Nimbusのコール。

しばらくして「2468 Down Wind」(Discus)のコール。さらに3分後、少しキレた声で「2468ィ準備よし」とか言っている。すぐにまた飛ぶわけだ。つまり、2468は12月30日の私と同じ状態。自分より上手いヒトが、自分と同じ失敗パターンにはまりつつあるのをウェーブに入りながら見る(聞く)。なんというシアワセでしょう…。

13:40 高度10,000ft。
サーマルウェーブなので、位置がころころ変わる。また、風が強く、135km/hを維持してもなかなか前へ出ない。GarminのWindAloftに「AirSpeed 135、Heading 330」と打ち込むと、風は330度から130km/hと出た。そのまんまじゃねえか。

距離計が0.01km(10m)進むのに10秒くらいかかる。つまり時速3.6km。ウェーブって退屈なのね(私は初めて)。
2254と相談し、前へ出てみることにする。

170km/hで足利方向へ進む。特に沈下、というほどでは無いが、当然バリオはマイナスに転じる。何より風が強いため、足利到着時点で6,000ft。
途中で2254のコール「桐生と大間々の間で6,500ft。気流悪いっす」ひえ。どうやって行ったのさ?

14:00 足利と桐生の中間。
山沿いで、さっきウェーブに入る前と似たパターンのプラスを見つける。さんざん探るが、雲底(6,000ft)以上には上がれない。一時、3,000ftまで落ちて、少し泣きを見る。

14:20 2468からのコールで、栗橋に降りるという。
この風で、よく動く人だ。彼のリトリブを手伝うため、板倉に戻ることにする。

14:41 板倉着陸。

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2468は、なんと、あれから下妻まで行ったらしい。我々は結局、11,000ftもありながら、25kmしか移動していない。これではXCとは言えないではないか。

「我々は『すりばち』というよりは、『シャンパングラス』から出ていないのかも」
「ハハ、グライダーは移動しなきゃだめですよ」
「移動して破綻するならサルでもできる!」