周辺気象

北関東-板倉滑空場の気象条件

板倉滑空場は、地理的には関東平野のやや北よりに位置し、背後に足尾山地をいただいています。山地に近いことから、独特の気象条件が生み出されています。


サーマルとウェーブ:

リフト(上昇気流)としては、この2つはともすれば別々のものと捉えがちですが、板倉滑空場を含む関東北部では、ウェーブとサーマルの相互作用によって、ユニークな気象条件が生み出されています。

サーマルとは、地面が日射により暖められ、それによって地面と接する空気の層も温度が上がり、ついには温かい空気のバブルとなって上昇する、いわゆる「熱上昇気流」のことです。

ウェーブとは、気象用語で「山岳波」あるいは「定常波」とよばれるもので、山岳に強い風が吹きつけると、その下流で気流が「波」を形成するようになります。この波は、しばしばその山と谷が移動せず、一定の場所にとどまって発達するようになります。このため、定常波と呼ばれますが、気流が山にさしかかる部分では、強い上昇気流となっています。

関東地方でのソアリングは、通常11月くらいにシーズンインとなります。いわゆる「西高東低」の気圧配置で上空に寒気が入ってくると、リフトの到達高度の上限が高くなり、3,000mを越えることも珍しくなくなります。

このようなとき、関東北西部での一般的な風向はおおむね北西で、いわゆる「赤城下ろし」の「からっ風」が吹き渡ります。この風が板倉滑空場の北にある足尾山地に吹きつけるとウェーブが形成され、なおかつ山地は南に向いているので、山の斜面でできるサーマルがこれと組み合わさります。

さらに、板倉の北東側の栃木県宇都宮市から小山絹滑空場にかけてのエリアでは、おなじ西高東低の気圧配置下でも、真北の風が卓越するようになります。これは地形によるもので、脊梁山脈を抜けた季節風が、那須、日光連山を回り込んで、鬼怒川水系に平行に吹くことによるものです。

この真北の風と、板倉から西側での北西風がぶつかりあうと、いわゆる「コンバージェンスライン」が形成されます。このラインは板倉滑空場の少し北を通って東南東に伸びることが多く、リフトの列ができ上がります。このコンバージェンスラインを北西の風上にたどってゆくと、足尾山地に少し入ったところで途切れてしまいますが、多くの場合には、このエンドの風上でウェーブにコンタクトできます。これらによって、日光男体山(板倉から55km)、高原山(板倉から70km)方面へのクロスカントリーフライトを行うことができます。

また、滑空場の北西40kmにある赤城山方面から、いわゆる「クラウドストリート」が発達してくることもよくあり、これを用いて長野方面へのフライトも行われています。

このような気象条件は、例年6月の初旬まで現れますが、そのピークは2~4月といえるようです。

その他のソアリングの条件:

春季の移動性高気圧のもとでは、よりマイルドな気象条件がもたらされます。ぽかぽかとした陽気の屋外は微風も心地よく、芝生の緑がまぶしいランウエイでは花の香る心地すらします。リフトはサーマルが主となりますが、その到達高度は日ごとの気象条件によってかなり左右されます。上層にいくらかでも寒気が入れば、到達高度は高くなり、またやさしいサーマルとなります。一方、逆転層で頭が低く押さえられる場合もあります。サーマルが主体の気象条件でも、その上層の流れの影響を受けることは明らかで、ウェーブの作用により、区域によってはリフトが活発となり、同時に別の区域ではほとんど空気の上下動がない、というような状況も現れることがあります。

以上、全般的には、板倉滑空場は北関東内陸部にあるため、低気圧や前線の影響も比較的小さく、比較的晴天率が高くなっています。また、海から遠いので、いわゆる「海風」の影響も小さく、移動性高気圧下でのソアリングコンディションも安定しています。台風、大雨でも滑走路の冠水は少なく、年を通じて滑走路の稼働率は高く、良好な路面が提供されています。

滑走路の方向は330°/150°であり、これは季節風の風向にほぼ正対しています。したがって、極端なクロスウインドが吹くことは少ないといえます。これは、飛行の初歩訓練では重要な要件です。

オンラインコンテストの滑空場別のページを見てみましょう。クロスカントリーの盛んな滑空場であることが分かります。