TEAM MARU リーダー 赤石京子
TEXT:河村 大(TEAM MARU広報)
丸山のキャリアとTEAM MARU
みなさんこんにちは。私たちは TEAM MARU(チームマル)と申します。グライダー世界選手権に参戦するパイロット 丸山 毅(まるやまたけし)をサポートするために2013年から活動しているチームです。
丸山 毅 は グライダー歴28年、総飛行時間約3,300時間 、総クロスカントリー距離13万km のベテランです。サラリーマン生活を続ける傍ら日本代表として活躍し、グライダー日本滑空協会の理事、国際滑空委員会の日本副代表委員などを務め、所属する日本グライダークラブでも理事やチーフインストラクターといった役職に就き、パラレルキャリアで活躍中の47歳です。
グライダー世界選手権への出場は1999年の第26回ドイツ大会から。その後2008年の第30回ドイツ大会、2014年の第33回ポーランド大会に出場、27位という最高成績を残しています。また、ヨーロッパ選手権にも2度出場し、最高位は19位相当。そのほかポーランド、ハンガリー、チェコ共和国といった国々のナショナル大会にも出場し、最高で8位を獲得した経験があります。
チームのメンバーは9名。大会中地上でサポートを行うグランドクルーを中心に、ボランティアで集まった集団です。チームビジョン(野望)は「グライダーをもっと多くの人に知ってもらい、楽しんでもらいたい!」ということ。チームとして「勝利」「普及」「育成」というトリプルミッション を掲げ、具体的には以下のような目標を持っています。
・「勝利」 世界のトップ10入り
・「普及」 グライダー認知アップ!
・「育成」 若手を世界へ!
ただ、日本代表といっても国からの支援などがあるわけではなく、実際に費用を捻出するのはパイロットの丸山。国外への遠征費用が大きな負担になっているのも事実です。
そこでみなさんにお願いです。今回は2018年夏にチェコ共和国で行われるグライダー世界選手権に参戦するのですが、そのための費用を一部ご支援いただけないでしょうか?
グライディングのガラパゴス化から脱却したい!
日本ではグライダーはまだまだマイナーなスポーツです。丸山の後に続いて世界へ打って出ようとする若者もなかなか現れません。海外との交流も限られ、世界の現場で日々進化を続けているフライトメソッドや新しい操縦教育方法が積極的に導入されることもありません。全日本クラスの競技会すら行われなくなって久しく、最前線で切磋琢磨されるべき 「スポーツ」 としての技術的アップデートが行われていません。有り体に言えば 「ガラパゴス化」 が進んでいるのです。
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丸山はこの状況に警鐘を鳴らします。
インターネットの登場で世界との距離は縮まっているはずなのに 「学び」 という観点から見ると精神的な距離はむしろ増えている感じがしています。新しいものを自分の中に取り入れていくには価値観そのものを変えねばならず、その壁を継続的かつ大胆にブレークスルーしていくにはかなりの労力を要します。 「学び」 を外に求めないほうが楽なんです。でも実際のところ世界ではどうなのかというと、新しい方法がどんどん標準化されており、教育方法も変わってきています。このまま日本という島国の中だけで完結してしまっていては世界との距離が広がっていることにすら気がつかなくなってしまいます。それは、避けたい。
ブーカの空と今求められるスキル
世界は VUCA(ブーカ)の時代になった、と言われて久しいです。これはVolatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)という4つのキーワードの頭文字から作られた言葉ですが、現在の社会や経済環境が、予測困難な状況に直面しているという時代認識を表した用語として知られています。
このブーカの時代にあって、今本当に求められているのは「前例にとらわれて何かを考える」のではなく、「前例のないところで考える力」だと言われています。何をするにも「自分で考えること」が大切になっているのです。
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丸山は「グライダーパイロットに求められるスキルは、まさにこのブーカの空を飛ぶ能力にある」と言い切ります。空には一度として同じ状況などなく、飛び方の 「答え」も毎回違ってきます。目の前で変化する状況に対処し続け、その中で最善の道を選び、前へ前へと進まねばなりません。
もちろん、「場周」や「曳航」など、グライダーのライセンスを取るまでの訓練にはちゃんと答え(型)が用意されています。でもそこから先に、遠くへ飛び、クロスカントリーフライトをしようと思ったら、自分の頭で考え、判断することが必要になります。人に答えを求めていては上達はおぼつきません。そして、その先にある「競技会で飛ぶ」というスキルに関しては、日本では限られた人しか持ち合わせていない、というのが現状です。
なぜ世界大会へ参加するのか?
グライダーは競技会が全て、ではありません。でも、同条件下でライバルと切磋琢磨する中で得られる 「気付き」 はグライダースポーツの発展に計り知れない恩恵をもたらします。他人より1秒でも早いスピードを競う現場では、変わり行く天候への予測能力はもちろん、上昇気流の取捨選択からコース取り、クルーズスピードに到るまで全ての判断を瞬時に、そして最適にコントロールしていく必要があります。次々に変化する予測不可能な世界の中で、今できることに集中し、ありとあらゆる知見と情報を総動員しなければならないのです。そしてさらに、フィジカルな鍛錬から「前へ進む」意志力までもが強く要求されます。それは、究極に効率化されたクロスカントリーフライトと言っていいのです。
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複雑で、曖昧で、常に変化する不確実な空を自分の判断で飛ぶチカラ。その能力レベルを他人と比較する中でわかりやすく指し示してくれる場、それが競技会なのです。
そこで得られる最新の知見や、そこで飛ぶために行った対策や練習方法、そして海外遠征の方法や各国のパイロットと交流する中で得られた情報などを、自らがその中に身を置くことで学んで行きたい。そして日本の空を飛ぶ若者のためにフィードバックしていきたい、フィードバックすることで、日本のグライディングの飛び方、飛ぶ事への考え方を世界にあわせていけるように、操縦教育にイノベーションを起こしたい! と丸山は考えています。
操縦教育にイノベーションを起こしたい!
2009年には若いグライダーパイロットへのコーチングを目的とした「Soarist ユースキャンプ」の開催に協力しています。
この「ユースキャンプ」の取り組みはとてもユニークです。期間中はひとりひとりの若者がそれぞれ1機のグライダーを占有することができ、何度でも何時間でも飛ぶことができます。気象条件を調べ変わり行く空の条件を肌で感じながら自分の判断で空へ飛び、クロスカントリーフライトしてくるのです。
ここでは何よりもまず 「自分で考えること」が優先されます。学生航空部の団体合宿生活では望んでも得られない条件の中で個々の可能性を引きだそうとしているのです。このユースキャンプはその後も継続的に続けられています。
また彼はイギリスのグライダーインストラクター向けのマニュアルを有志10名のチームで翻訳、配布 しています。将来的に日本版のグライダーインストラクター向けのマニュアルをチームで執筆する計画にしています。
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さらに、今回の世界戦への参戦に際し、現地のグランドクルーとして新たに2名の有志にご協力を依頼しました。吉岡利典さん(日本グライダークラブ・43歳)と 市岡拓也さん(東京グライダークラブ・25歳)です。
吉岡利典さんは先述した「Soarist」を奥様の名保恵さんとともに創設された中心的人物です。若手パイロット育成の方法論を日夜語り合い、丸山と夢を共有しながらアクティブに活動されている、尊敬すべき仲間のひとりです。
市岡拓也さんとはこの「Soarist」の活動を通じて出会いました。ヒントを与えるとわからないことをすぐ調べ、学んで吸収し、自分なりの判断をし、実際に行動に移すことができる希有な若者です。丸山はその姿に「ブーカの空」を自らの力で飛び続ける可能性を感じ、今回の大会に誘い入れています。
これら新しいチームメイトが、世界トップのアスリートがひしめく現場を目の当たりにするインパクトは計り知れません。この経験によって彼ら自身の中で化学反応が起こり、今後の活動に新しいエッセンスが加わっていくことを願ってやみません。
※実際には従来からクルーとして活躍している 福崎誠さん(日本グライダークラブ・48歳)と合わせ、グランドクルーは3名体制となります。福崎誠さんは2008年から世界選手権2回を含む4回の国際大会で丸山のクルーを務めるベテランです。学生時代からの友人でもあり、丸山の良き理解者です。
世界選手権に向けた準備状況
前回2014年の世界選手権後、さらなる飛躍を目指して、毎年海外での競技会への参加、世界チャンピオンクラスコーチとの合宿 を通じて練習を重ねてきました。今シーズンは2017年11月のナミビアでの世界チャンピオンとの合宿トレーニング で弱点を補強し、2018年は4月にハンガリーでの競技会 、5月のチェコ選手権でトレーニングを行いました。チェコ選手権ではデイリーで3位に入る日 もあり、練習での成長を実感しています。
グライダー世界選手権とは?
ではグライダー世界選手権とはどんな大会なのか、どのくらいの国とパイロットが集まって何を競うのか、簡単にご説明いたしましょう。
第35回グライダー世界選手権大会について
■大会ホームページ
http://www.wgc2018.cz/
■開催場所: チェコ共和国 ホシン飛行場
首都プラハから南に120km、車で2時間程度
■大会期間: 7月28日 〜 8月12日(15日間)
■参加国数: 29か国
■参加人数: 115人
■開催クラス: オープンクラス、20mクラス、18mクラス
■参加クラス、使用グライダー: 18m クラス、ASG-29E
TEAM MARU 世界選手権現地チーム体制
■遠征期間: 7月21日 〜 8月14日(25日間)
7/21 日本出発
7/22 – 7/27 練習期間
7/28 開会式、エアショー
7/29 – 8/11 競技期間
8/12 閉会式
8/14 日本帰国
■遠征人数: 5名
チームリーダー 赤石 京子 Soarist
パイロット 丸山 毅 日本グライダークラブ、Soarist
クルー 福崎 誠 日本グライダークラブ
クルー 吉岡 利典 日本グライダークラブ、Soarist
クルー 市岡 拓也 Soarist
■必要経費: 合計 ¥3,562,039
科目
金額
備考
往復航空券
¥1,227,000
パイロット、チームリーダー、クルー3名、空港往復
滞在費
¥401,625
レンタルハウス、ベースキャンプ
グライダーレンタル
¥945,000
レンタルフィー、バックアップグライダー手付、陸送
曳航料
¥121,500
エントリー費用
¥108,000
レンタカー
¥342,225
機材車2台
食費
¥181,440
自炊
その他機材
¥235,249
ソフトウエア、無線機輸出、現地携帯電話、他
合計
¥3,562,039
経費まで載せてしまいましたが、1回の遠征でかなりの費用がかかることがお分かりいただけると思います。このうち幾ばくかでもご支援していただけましたら、幸いです。
「ワクワクすること」が大切
とはいえ、本人はこの高額な経費を義務感で捻出しているわけではありません。やはり、世界選手権に出場すること自体が楽しいのだそうです。想像するだけで心が躍り「この年齢でこれだけワクワクできることは他にない」からこそ出場するのです。
では、なぜワクワクするのか?
それはズバリ 「無知の知」 を知ることにあると言います。
「今まで見えなかったものが見える!」
「できなかったことができるようになる!」
人生においてこれほど楽しいことはなく、体力が続く限りチャレンジしていきたい! と彼は言います。
彼自身は、決して生まれ持ってのアスリート、というわけではありません。学生時代の上達は 「並み」 より遅かったですし、緊張しいです。そして 「迷い」や「恐れ」、「逡巡」や「後悔」といった誰もが普通に持っている感情と日々戦っています。そして何よりも彼自身、自分の頭が固く、前例にもとらわれやすく、チャレンジすること自体が苦手であること自覚しています。
でもだからこそ競技会に集中し、素の自分をさらすことで、今の自分を知り、未来の自分を高める作業にワクワクするのだ、といいます。そしてこの楽しさを、日本の若手にぜひ味わって欲しい! できることならサポートしてあげたい! と彼は願っています。
実のところ、世界選手権のことなど何も知らなかった丸山が欧州へ何度も遠征する中で得てきた知見、そして築き上げてきたコネクションは膨大です。その経験と資産を、彼は後に続く日本のグライダーパイロットに残そうとしています。
実務的な遠征の方法も継承したい
例えば機体の貸し借りひとつとっても、それはお金を積めばいい、という話ではないといいます。ヨーロッパはやはりファミリーの文化で、大切な趣味の道具をどこの誰とも分からない東洋人においそれとは貸してくれません。でも何度も行って来たヨーロッパ遠征を経て、彼自身が積み上げてきた認知度と信用によって、今では「丸山ならいいよ、貸してあげる」というパイロットが多く存在するようになってきています。それはこの先、国内の若手パイロットが遠征する際のアドバンテージにもなるでしょう。「丸山の紹介ならいいよ!」とすんなり借りられる可能性も多いのです。
こういった財産や海外遠征の経験、そして文化すらも、彼は若手に継承していって欲しい、と願っています。
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いかがだったでしょうか。私達 TEAM MARU は「勝利」「普及」「育成」という3つの目標に対し、このようなスタンスで取り組み、世界選手権に参戦して参ります。大会期間中はホームページやSNSを通じて現地の情報を可能な限り迅速にお伝えする予定です。そしてより多くの方々にこの大会の魅力をお届けして参りたいと考えております。
チームにとって何よりも嬉しいことは、皆様からいただく応援メッセージの数々です。パイロットの丸山も、時間差こそあれ、全てに目を通し、必要あればご返信させていただいております。チーム一丸となって戦って参りますので、どうかご支援よろしくお願いいたします!
■TEAM MARU ホームページ
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■パラレルジャーナル様「やりたいことがあれば挑戦すべき!―世界大会出場のサラリーマン・グライダーパイロットが実践する仕事と夢の両立」 (パイロットインタビュー記事)
https://crowdworks.jp/p-journal/?p=1421
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■30,000円の寄付
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・秋に開催予定の報告会へのご招待
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リンク先 http://bit.ly/wgc2018maruyama
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振込先
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(社)日本グライダークラブ
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